「AI時代にUIなくなるのか?」における自分のスタンス整理
作成日:2026/01/25
このブログでは、「AI時代にUIはなくなるのか」およびAI時代にどのようなスタンスでUI設計を行うべきかについて、自分の考えを整理した。
まずAI時代にUIはなくなるのかといった仮説については、タスク完了時間とユーザーアクション数の観点で既存UIを完全に置き換えることは難しいと考えている。
上述の結論をもとに複雑性と使用頻度の観点でUI設計方針を再定義した。その結果、複雑かつ低頻度の場合は操作をブラックボックス化できるAIに代替させ、単純かつ高頻度の場合はユーザー体験を優先したユースケースごとのUIを用意することが望ましいという考えに至った。
経緯
最近、「AI時代にUIはなくなるのか」といった話題を見た。その話題に対して自分のスタンスを持っておきたく考えを整理したいと感じたのがきっかけである。 まず「AI時代にUIはなくなるのか」についてどういうことかを説明すると、昨今AIの汎用性が向上したことでチャット形式のUIを介してAIとやりとりしながらソフトウェアを操作することが多くなった。 このことから、AIと対話できればユースケースごとのUIは不要ではないかといった仮説が出てきた。
この仮説に対して以下の観点から自分のスタンスを整理していきたい。
- チャット形式のUIによってユースケースごとのUIが代替される可能性
- AI時代におけるUI設計方針
チャット形式のUIによってユースケースごとのUIが代替される可能性
では、「AI時代にUIはなくなるのか」という仮説について考察してみる。
UIの使いやすさを定量的に評価するためには以下の指標を使うことができる。
- タスク達成率
- タスク完了時間
- ユーザーアクション数
- エラー率
ではこの指標の観点でチャット形式のUIがパフォーマンスを出せるか考えてみる。
各指標におけるパフォーマンス
タスク達成率
この指標についてはチャット形式のUIのほうが高いパフォーマンスを出せると考える。また今後のモデル性能の向上によってさらにパフォーマンスが上がると考えられる。 一方で、ユースケースごとのUIはタスクの複雑度が上がるにつれて達成率が下がると想像している。それはユーザーの認知負荷によって操作を間違える可能性が高くなるためである。ただ、これはUI設計の工夫や慣れによって改善する可能性はあるだろう。
タスク完了時間
完了時間に関しては以下の観点でチャット形式のUIでは高いパフォーマンスを出しづらいと考えている。
- モデルの応答時間
- ユーザーの命令文の作成時間
プロンプトを考えてAIに渡すよりもUIを操作するほうが完了時間の観点では高いパフォーマンスが出せると考えている。 複雑なタスクや慣れが必要なタスクの場合は、AIが操作をブラックボックス化してくれるためチャット形式のUIが有利になる可能性はあるかもしれないが、頻繁に使用する場合は慣れによるパフォーマンス向上が見込めるためユースケースごとのUIのほうが有利に感じる。
ユーザーアクション数
チャット形式のUIだとプロンプト入力や対話の手間があるため、ユーザーアクション数が多くなりがちだと考えている。 プロンプト入力のためにキーストロークを繰り返すよりも、マウスでボタンをクリックするほうがアクション数の観点では有利だろう。 タスク完了時間と同じで複雑なタスクの場合はAIによる操作のブラックボックス化によってアクション数が減る可能性はあるかもしれないが、頻繁に使用する場合はユースケースごとのUIのほうが有利に感じる。
エラー率
エラー率に関してはモデルの性能やプロンプトの質が良ければAIを使用したチャット形式のUIは良いパフォーマンスを出せると考えている。 ユースケースごとのUIでも慣れによってエラー率は削減できるかもしれないが、ヒューマンエラーの確率があるのでAIのモデルの性能の向上による精度向上のほうが信頼できそうである。
AI時代にUIは必要か?
以上の各指標における考察を踏まえると、タスク完了時間とユーザーアクション数の観点でAIによるチャット形式のUIは既存のUIを完全に置き換えることは難しいと考えている。 ただし、タスク達成率やエラー率の観点ではAIによるチャット形式のUIを使用した方が優れていると感じる場面もあり、これらの指標におけるパフォーマンスが悪いUIはチャットUIに置き換えることができると感じている。
AI時代におけるUI設計方針
では、上記の考察を踏まえてAI時代におけるUIの設計方針を考えていく。
AIに代替できる箇所とUIを用意するところ
まず、ユーザーが行う操作を頻度と複雑さの2軸で分類する。
- 単純かつ低頻度の場合:タスク完了時間の観点でUIを用意しても良いと思う。ただしAIが高速に応答できる場合は代替もしくは両方のインタフェースを用意しても良い。
- 複雑かつ低頻度の場合は:AIを使用して単純化できると思う。ここに関してはAIによる恩恵がかなり大きいと感じている。
- 単純かつ高頻度の場合は:ここはUIを用意しても良いと思う。プロンプトを入力するよりボタンを押した方が効率がよさそうだと思う。
- 複雑かつ高頻度の場合は:UIを用意すべきだと思う。習熟度が低いうちはチャット形式でできるほうが考えやすいかもしれないが、それを繰り返すことを考えるとチャット形式ではストレスに感じる時が来るだろう。
UIを用意するとなったときににおける設計方針
まず上述の定量指標を満たすことが良いUIだと考えている。その上でそれらの指標を満たすためにどのようなUIを設計すれば良いかを考える。
良いUIを設計する際の方針として以下のようなガイドラインが参考になる。
Sociomedia ヒューマンインターフェース ガイドライン
その中でも特に意識をしたいと感じている以下を整理したい。
- メンタルモデル
- モードレス
メンタルモデル
メンタルモデルは人が経験を通して形成するイメージである。 このイメージをもとにUI操作の予測や理解を行うことができる。 例えば、「ハンバーガーアイコンを押すとメニューが表示される」「ゴミ箱アイコンをクリックするとフォーカスしていた要素が削除される」といったイメージがそうである。
これを利用することができれば、ユーザーを悩ませることなく直感的な体験を提供できるだろう。
モードレス
モードレス性を考察するにあたって以下の書籍を参考にさせていただいた。 そのうえでモードレス性の重要性について自分の考えを整理する。
「モードレス」とは、UIに可能な操作を限定したりフローを強制させる等の「モード」がない状態のことである。 モードレスなUIによってユーザーはシステムに強制されることなく自分が思った通りの操作を行うことができる。 例えば、「YoutubeなどのピクチャインピクチャUIによって動画再生の状態に縛られずに検索などがおこなえるUI」や「メッセージ通知のトーストUIによって操作完了の通知によって現在の操作が邪魔されなかったりそこからさらに操作を取り消したりすることができる」などがモードレスなUIの例である。 逆に、モードがあるUIの例は「確認ダイアログによって操作フローが強制されるUI」などである。
ただし、パフォーマンスなどの技術的制約や安全設計におけるフールプルーフの観点からモード性を取り除くことが難しい場合や、モードがあることでユーザーが迷わずに操作できる場合もあるため、モードレスが常に最適解とは限らないと考えている。
モードレスなUIはユーザーの自由度を高めることで、直感的な体験を提供できる一つの考え方だと思う。
まとめ
AI時代にUIはなくならないと思う。ただし、AIによるUIの簡略化で新しいメンタルモデルが形成されていき今までのセオリーが通用しなくなっていく可能性があると感じている。
この整理をもとに自分は今まで自分がUI設計において大事にしていた方針を見直してAI時代でも通用するスタンスを取りなおすことができた。