読書感想文:「ゆとりの法則 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解」

作成日:2023/01/07

面白かったポイントと考察

仕事の切り替えにともなうロス

仕事で複数のタスクを抱えているかつそれを並行して行わないといけない場合、タスクの切り替えのための準備にかかる時間を考慮しないといけない。 実際、自分も仕事で複数タスクを抱えているとき、タスク切換えに余計な時間を取られることがある。

また、下記の通り仕事の内容によってはタスクの切り替えにもっと時間がかかってしまうものもある。

仕事には作業に「没頭」しなければ進まない種類のものがある。(1)

没頭を必要とされる仕事が中断されると、再開するには 2 回目の没頭時間が必要である。(2)

特に難易度の高いプログラミングとかはこの傾向にある気がする。タスクの切り替えで集中までの時間を再度取らないといけないとなると、余計非効率なんじゃないかと思った。
もし、自分が今後難易度の高いことが予想される実装をするときは、「1 日中私は反応しないですからね!」みたいな感じで完全にシャットアウトしたほうが効率が良いのかもしれない。実装計画を建てることができるのなら、認識合わせのための MTG は定期実行しておけば良い(その代わり自分や他メンバーが壁にぶつかってもサポートできない時間があることによるリスクは予め計画に組み込んでおかないといけない)。

「管理」という大事な仕事から逃げてはいけない

「管理」は白黒はっきりつく仕事ではない。そのため達成感が出づらくやってても気持ちよくなれない場合が多い。自分は最近プロジェクトのリーダー的ポジションをさせてもらっているのでこの感覚がよく分かる。自分の経験上その気持ち悪さを解消するために、かんたんな仕事か達成基準が明快な仕事に逃げてしまうこともあったと思う。ただ、このかんたんな仕事や達成基準が明快な「気持ちの良い仕事」に逃げたからといって、「管理」の仕事が進むわけではない。結局最後に後回しにしたつけは回ってくる。
この悪循環によって「管理」という仕事は大変で忙しい仕事なんだなと思ってしまうのだろう。本には下記のように記述されていたが、そのとおりだなと感じた。

管理はむずかしく、それはやるべき仕事が多いからではない(働きすぎている管理者は、ほぼまちがいなく、やるべきではない仕事をやっている)。管理がむずかしいのは、習得がむずしい技能を必要とするからだ。(3)

時間のゆとりを作る

自分は周りから良く見られたいという願望を持っている。そのためにいろんなタスクを引き受けて自分を圧迫してしまうことがある。もしそれが完璧にこなせるのであれば素晴らしいことであるが、タスクを受けすぎたことで個々のタスクの達成度が中途半端になってしまってはそれはそれで責任感がないとも言える(そんなつもりはないのだが、周りから見ればそうなっているのだろう)。

じゃあ自分の能力の 100%くらいのタスク量なら大丈夫かな!、、、そんなことはない。

なぜかというと、状況の変化に対応するためのゆとりがなくなるからだ。例えば、急なインシデントの対応や将来よりよい開発をするための勉強への投資や急な要求への対応を行うためには、それに対応できるための余力が必要だからだ。また、「管理」をしている人は情報をメンバーに流すためにも余力を残しておかないといけない(忙しすぎて情報を伝えるのができなかったというのは自分の責任である)。

ならどうやってゆとりを作っていくのか?

ゆとりを作るためには戦略的に仕事をするのが良いと思う。戦略的に仕事をするというのは、何をやるべきで何をやるべきでないかを見極めて小さな力で大きな成果を出せるように努力することである(全力疾走しなければいけない時もあるかもしれないが、絶対に続かないしリスクが大きいので状況は選ばないといけない)。そうすればやるべきことも少なくなるので、ゆとりを作りやすくなり、そのゆとりでこの変化の早い時代に適応していくことができるのではないかと思う。
また、ゆとりを作るのは自分だけではない。特にチームを管理するのであればチームのゆとりも確保しないといけないと思う。チームの行動を何らかの指標(ベロシティやバーンダウンチャート)で表し、それをもとにしてゆとりを作れるようにするのが良いと思う。

終わりに

なぜこの本を読んでみようと思ったかというと、仕事や私生活に対して最大限のパフォーマンスを発揮できていないと感じたからである。その理由は、愚直に頑張ることばかりを選択しており、このままだと成長できないと感じたからである。成長できないと何年立ってもタスク達成スピードは変わらず、体力が落ちていくばかりで今のやり方は通じなくなる、そして長期的に見てパフォーマンスが下がる。気合を入れて頑張るところは選択しないといけない。逆に、ゆとりの時間で成長する機会を作れば今よりももっと短い時間でタスクを達成でき、長期的に見て自分ができることは増えていくのではないかと思っている。そう思ったときにこの本の存在を知って読んでみたのである。
実際にこの本は自分に対して新しい選択肢を与えてくれた。

参考文献

(1) トム・デマルコ(著), 伊豆原弓(訳):ゆとりの法則 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解, 日経 BP 社, p.26, 2001

(2) 同上, p.27

(3) 同上, p.96