読書感想文:「デザインリサーチの教科書」

作成日:2024/01/22

更新日:2024/02/03

学習の内容と経緯

経緯

仕事で UI 設計を担当しており、下記について悩む事があったのでこれを解決したいと思ったことがきっかけ。

  • UI 設計から実装を終えた UI について関係者から指摘をいただくことについて、手戻りがきつい修正とそうでない修正がある。この手戻りのダメージを少なくするために段階を踏んで、修正のダメージを軽減する合意方法がないものかという悩み。

面白かったポイントと考察

デザインリサーチは人々からインスピレーションを得ることを重要視している

もともとこの本を読んだきっかけは設計に対する仮説検証に悩みがあったからであったが、その前段階でもやらなければいけないことがあると知った。 まず、どんなプロダクトにするか決めるために人々の生活を理解しておく必要がある。そこで生活においてどんな課題があるかを認識しそこに対してアプローチを行うことで、真に人々から使ってもらえるプロダクトを提供できるのだと思った。もちろん、すべての課題に対応することはできないので解決すべき課題は絞り込まないといけないが、絞り込む以前にインスピレーションをたくさん得て選択肢を広げておかないとそれが本当に人々の課題を解決するか評価ができない。
また、気をつけないといけない点として、デザインリサーチはマーケティングの用に統計(統計によって汎化した対象ユーザーの仮想的なモデル?)を重視したアプローチではなく個人の特性を重要視する。おそらくこれは人々の特性は簡単に汎化出来るものではないという考えから来ているのだと理解した。そのため、デザインリサーチでは実際の人々に意見を聞いて、その結果で得た課題に対してアプローチを行っていくと理解した。

デザインプロセスは発散と収束繰り返し

デザインリサーチを行うためのプロセスをデザインプロセスと呼ぶ。そしてこのプロセスでは発散と収束が繰り返されているという特徴がある。 本書にはその発散と収束のプロセスを「Discover」「Define」「Develop」「Deliver」のステップに分類していた。

  • Discover
    課題を洗い出すステップ
  • Define
    課題を絞り込むステップ
  • Develop
    解決策を洗い出すステップ
  • Deliver
    解決策を絞り込むステップ

このプロセスにはかなり納得を得ることができた。アイデアを出してその中から解決すべき課題に絞り込むことは行っていたが、如何にして解決に導くかのプロセスは一番はじめに思いついた方法で進めることが多かったので、個人的にもこのプロセスは頭の中にいれておき習慣化出来るようにしておきたい。
そして、解決策を洗い出したり絞り込んだりしている最中にも解決すべき課題がより鮮明に見えてくることもありそうだと思う。このプロセスを繰り返すことによるアイデアのブラッシュアップが今後できるようになりたい。

アウトカムとアウトプットの違いは理解しておく

アウトカムとアウトプットの違いは頭に入れておきたい。アウトカムはタスクを行って結果得られる利益のことで、アウトプットはその過程でできた成果物である。アウトカムに対してどんなアウトプットがあればよいか考えるためにもこの違いは区別しておきたい。

プロトタイピングのフィデリティは検証したい内容に合わせる

基本的にデザインリサーチのプロトタイピングではクイック&ダーティで早く多く失敗する(フィデリティの低いアウトプットで仮説検証をたくさん行う)。 この考えにはとても同感を得たが、自分の行動として取り入れるためにはすこし段階が必要だと感じた(いきなりは完璧にできないので少しづつ取り入れるようにしたいという考え)。
例えば、関係者がユーザーに提供可能なプロダクトか(進捗を含めて)判断をしたいという場合はどうしてもクオリティの高い High-Fi なアウトプットを提供する必要があるかもしれない。一方で、共同開発者が設計をするために機能や画面に必要な情報を判断したいという場合は情報設計だけの Low-Fi のアウトプットで良い可能性がある。また一方で他の共同開発者が使いやすい UI になっているか判断したいという場合はラフスケッチのような Low-Fi アウトプットになると思う(ここでは判断する人に合わせたラフ度で記載する必要があるのでそこが大変だったりもするが)。
上述のように組織によってリリースするまでの流れがあり、そのためのアウトプットは調整して如何に必要な情報を無駄な努力をせずに提供できるか考えないといけない。そして、今まで行っていた効率の悪かった時間はより多くの検証の時間に割り当てられ、手戻りも削減させることが出来るだろう。

Next Action

  • プロトタイピングのフィデリティを下げて、その状態でチームが仮説検証をできるようにする。

参考文献

(1) 木浦幹雄(著):デザインリサーチの教科書, ビー・エヌ・エヌ新社, 2020